このページは、埼玉県立歴史と民俗の博物館のスタッフが、博物館のイベントや大宮公園の様子、日々の業務から感じたことなどを皆様にお伝えしていくページです。
 各スタッフが自分の言葉で語りますので、ややつたない表現になることもあるかもしれませんが、大目に見ていただければ幸いです。

今年もやります!藍の種プレゼント!

※ご好評につき、配布を終了致しました。ありがとうございます!令和4年12月3日(土)

 

昨年大好評だった蓼藍(たであい)の種プレゼント企画!
好評につき今年もドドンと100組に無料配布いたします!

今年は種の収穫が遅れており、この時期になってしまいました。
長期休館中も博物館を忘れないで…!皆さんもお家で藍を育ててみませんか?

無くなり次第終了となりますので、欲しい方はお早めに『ゆめ・体験ひろばカウンター』へお越しください。
お待ちしております!!


藍の種配布2022ポスター.pdf

 

令和4年11月30日(水) 学習支援担当 藍野 花子

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(8・最終回)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第8回(最終回) ヤマト政権の重要な港湾施設「紀氏の遺跡」

 

 展示会場に入ると縄文土器の奥にケースに入りきれずに露出展示となっている灰色の大きな甕(かめ)があります。高さ1m以上のこの大甕は和歌山市鳴滝(なるたき)遺跡から出土した須恵器(すえき)という焼き物です。須恵器は西暦400年前後に日本で生産が始められた硬く丈夫な土器です。当時最先端である須恵器をつくる技術は朝鮮半島からもたらされたものです。

 この大きな甕や展示中の楠見(くすみ)遺跡から出土している器台などの須恵器の特徴から、和歌山市を流れる紀の川流域では日本国内でも古い5世紀前半から須恵器の生産が始まっていたと考えられています。なぜこの地で当時の最先端技術を使った焼き物が生産されたのでしょう。

鳴滝遺跡出土 須恵器の大甕

 

 

 

楠見遺跡出土 須恵器の器台

鳴滝遺跡出土 須恵器の大甕 楠見遺跡出土 須恵器の器台

 古墳時代の紀の川河口付近は多くの船舶が停泊できる環境で、国内でも有数の港湾施設があったと推定され、ヤマト政権の対外交流の重要な港として機能していたと言われています。

 最初にご紹介した須恵器の大甕が出土した鳴滝遺跡では、当時最大級の倉庫が7棟も並んで見つかっていて膨大な物資を保管いていたことがわかっています。また、西庄(にしのしょう)遺跡では5世紀中葉から大規模に塩の生産が行われたこともわかっています。展示では製塩に使用した土器や漁労具を展示していますが、西庄遺跡からは朝鮮半島系の土器や鉄製品も豊富に出土していることから単に漁労、製塩をおこなっていたのではなく、航海術を駆使して国際的な活動をし、政治的にも強力な集団であったという研究者もいます。これら3つの遺跡は紀の川北岸にあることから、この地域はヤマト政権の重要な拠点であったと考えられ、ここを拠点とする勢力は後に中央貴族となった「紀臣(きのおみ)」とも言われています。なお、南岸の岩橋(いわせ)千塚古墳群などは後の紀国造(きのこくぞう)となる「紀直(きのあたい)」に関係する遺跡と考えられています。

西庄遺跡出土品 左奥が製塩土器

西庄遺跡出土品 左奥が製塩土器

 

令和4年7月14日(木) benbeke

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(7)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第7回 続縄文文化と古墳文化の交流

 

 あれ?と思われた方も多いのではないでしょうか。古墳文化の土師器と何やら見慣れない縄文で飾った不思議な土器が3世紀後半から4世紀前半にかけてつくられた墓地から一緒に出土しているのです。縄文で飾られた土器は北海道に分布の中心がみられる後北C2・D式土器。続縄文文化の土器です。青森県七戸町の猪ノ鼻(1)遺跡では、続縄文文化に特徴的な土坑墓から、異なる二つの文化の土器がともに出土しました。おまけに土坑墓のいくつかからは、古墳文化に由来する各種玉類や鉄器も出土しています。いったい古墳時代前期でも早い時期にこの地域では何が起こっていたのでしょうか。調査担当者により当地における、古墳文化と続縄文文化の人々の交流が指摘されています。展示してある後北C2・D式土器の小型深鉢には本来はみられない脚が付き、古墳文化の台付甕の影響が見受けられるなど、単なるモノのやりとりといった交流に留まるわけではなさそうです。

続縄文土器と古式土師器

続縄文土器と古式土師器

 

 後北C2・D式土器はこの時期には、日本海側では新潟県、太平洋側では宮城県まで分布を広げますが、その背景として、北海道に拠点をおく続縄文文化の人々が鉄器・皮革製品を対象とする交易をおこなうために南下したとする説があります。こういった魅力的な説を検証するうえで、猪ノ鼻(1)遺跡の調査成果は大変重要です。

 なお、玉類も出土しているとお伝えしましたが、B群墓地SK04から出土している碧玉製の算盤玉も古墳文化に由来します。この碧玉製算盤玉、古墳文化の領域でも大変珍しいものなんです。若干かたちが異なりますが、当館常設展示室Ⅱでは、埼玉県熊野神社古墳から出土した碧玉製の算盤玉も展示しています。時期は猪ノ鼻(1)遺跡よりくだりますが、ぜひ、比較してみてください。

B群墓地から出土した玉類(下中央が算盤玉) 熊野神社古墳の算盤玉(下中央)
B群墓地から出土した玉類(下中央が算盤玉) 熊野神社古墳の算盤玉(下中央)

令和4年7月13日(水) 展示担当 KK

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(6)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

 【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第6回 榛名山の噴火で埋もれたムラ 群馬県渋川市金井下新田遺跡

 

 現在、当館では全国巡回展の「発掘された日本列島2022展」を開催しています。その中から、群馬県渋川市金井下新田遺跡の発掘調査成果をご紹介します。

 金井下新田遺跡は6世紀初頭に噴火した榛名山の火砕流に覆われたムラです。北側には甲を身につけた状態で亡くなった人が発見された金井東裏遺跡が隣接しています。

 通常の遺跡では植物や動物、人間の体など有機質といわれるものは、土に埋もれている長い年月の間に土の中の微生物に分解されてしまうために形が残らず、発掘調査では土器や石、金属などしか出土しません。しかし、金井東裏遺跡や金井下新田遺跡では、火山灰に覆われた状態で土に埋もれていたため、古墳時代当時にムラで暮らしていた人々の生活の痕跡や被災した時の状況がそのまま残されていました。

 金井下新田遺跡からは、大型の竪穴建物や掘立柱建物を囲む網代で作られた垣根が噴火の際の爆風で倒れた状態のまま出土しました。展示とは別の機会にこの垣根を発掘現場から剝ぎ取った資料を見せていただいたきましたが、垣根に使われた植物の茎や蔓などが高温の火砕流によって焦げて炭になった状態のまま出土しており、古墳時代の網代の垣根がどんなふうに作られていたのか真近で観察できてワクワクしました。

 これまでに日本の各地で発見された、古墳時代の有力者が暮らしていた施設の多くは濠や塀で四角く囲まれています。また古墳からも家型埴輪の周囲を塀型の埴輪が囲んでいる様子を表したものが見つかっています。金井下新田遺跡で見つかった網代の垣根とその内側の建物跡はこの地域を治めていた有力者が暮らしていた施設であった可能性が高いです。

 また、金井下新田遺跡からは、小さな鏡や石製模造品、鉄製品、土器を用いた様々な祭祀の痕跡も見つかっています。

祭祀に使われた鏡と石製模造品

祭祀に使われた鏡と石製模造品

 

みんな大好き子持勾玉

みんな大好き子持勾玉

 何でこんなに祭祀をたくさん行っていたのでしょうか。いったいどんな願いを込めて祭祀を行っていたのでしょうか。もしかしたら榛名山が噴火しませんように、なんてお祈りしていたのかもしれません。色々と想像が膨らむ遺跡です。

 

令和4年7月12日(火) 学習支援担当 Y

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(5)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

 【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第5回 列島展、常設展示と合わせてさらにおもしろく!

 

描かれた汽車の絵

 突然ですが、「発掘された日本列島2022」のチラシやポスターを見て、「おや?奇妙だな」と思った方がいるかもしれません。

 なぜなら、土器や石器の写真と並んで、走る汽車のイラストが描かれた土瓶の図版があるからでしょう。発掘された出土品に近代的な汽車が登場するなんて、まるで、かの有名なデンデラの電球や黄金スペースシャトルのようなイメージを抱いてしまいます。大昔の人は、いったいどんなモチーフをこの絵に込めたのか―

 

 というのは冗談で、こちらは明治5年(1872)に開業した日本最初の鉄道の遺跡、旧新橋停車場跡で発掘された土瓶です。実は、この土瓶は本連載の第3回にもすでに掲載されています。

 考古学や発掘、埋蔵文化財というと、どうしても縄文時代や古墳時代を対象とするものという印象がありますが、もちろん中世、近世、そして近現代の遺跡、出土品もその範疇に含まれます。大昔の人々の生活の痕跡を伝える出土品ばかりが本展の見どころではありません。今回は、発掘された日本列島2022の最後を飾る史跡旧新橋停車場跡の展示をオススメします。

 鉄道は、同じく19世紀に西洋で発明され日本にもたらされた電信や郵便制度などとともに当時の社会を大きく変えた、まさしく近代化の象徴です。旧新橋停車場跡はその起点ともいえる駅舎の遺構です。

 解説によると、この土瓶は駅弁とともに売られていたお茶の容器だといいます。停車場跡からはほかに乗車券や改札ばさみ、チェッキなどが出展されています。改札ばさみは駅舎のトイレの跡から出土しており、慌ただしい業務のなかで駅員さんがうっかり落としてしまったのだろうか、と開業当時の駅の様子を思い描かせてくれます。

 旧新橋停車場跡からの出土品と合わせて、高輪築堤の発掘調査の成果も紹介されています。高輪築堤は、明治5年に開業した鉄道のうち、海上に鉄道を通すために築かれた堤です。日本初の鉄道は海の上を走っていたというのは驚きですね。海の上に線路を敷くための様々な工夫が発掘調査により明らかになり、当時日本に鉄道を作ろうとした人々の熱意が伝わってきます。

 実は、現在、当館には高輪築堤に関する展示がもう一つあります。特別展示室を出て地階に降りた常設展示室第9室では「渋沢栄一と鉄道」と題した特集展示を実施しており、新橋~横浜間の鉄道敷設に関する資料や、高輪築堤を走る蒸気車を描いた資料など、初公開資料を含めた明治時代の鉄道関係資料を展示しています。

 

高縄蒸気車往来図(明治5年)

 

 こうした資料からは、鉄道が出来上がるまでの経緯や当時の実際の運行の記録を知ることができます。そして、これら資料と出土品とを組み合わせることで、およそ150年前の社会の様子をより立体的にイメージできるでしょう。同時に、鉄道と埼玉県の歴史的な関係についても知っていただければと思います。

 「発掘された日本列島2022」は今後日本各地を巡回しますが、こうした同時代の鉄道資料と合わせて旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡の出土品を楽しむことができるのは、当館だけではないでしょうか。ぜひ、会期中に御覧になっていただければと思います。

 

令和4年7月8日(金) 企画担当 もんじろう(真)

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(4)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第4回 古墳時代に榛名山の噴火で火山灰に覆われた遺跡 

 

 群馬県の金井下新田遺跡は、6世紀初頭に噴火した榛名山の火山噴出物によって被災し、火山灰におおわれた集落の遺跡です。隣接する金井東裏遺跡で、同様に火山噴出物で被災した、鎧を着た人物が発見されたことをご記憶の方も多いと思います。

 金井下新田遺跡の発掘調査では、高さ3メートルほどの網代垣で囲まれた「囲い状遺構」と呼ばれるものが発見され、そのなかには大型竪穴建物、竪穴建物、掘立柱建物、土壇状の高まりなどがあり、地域首長の拠点施設と考えられています。また、その周辺からいくつもの祭祀遺構が検出されました。

 網代垣のような植物質の物は通常の状態では残らないものですが、火山灰で覆われたため残されたものと思われます。祭祀遺構からは剣や盾、短甲などの武器、武具や農工具を模した石製模造品、祭祀用の土器や鉄製品、子持勾玉や臼玉などが出土しています。それぞれの祭祀遺構で出土する物の種類や状況が異なっており、祭祀遺構を考える上で貴重な資料となるでしょう。また、盾形や短甲形の石製模造品は埼玉県内ではなかなか見られないものです。

 囲い状遺構の周辺の火山灰の上には、火砕流が押し寄せる前に避難した人々や馬の足跡、ひずめの跡も確認されています。古墳時代の生活の様子が鮮明にうかがわれる遺跡です。

金井下新田遺跡展示風景 出土した石製模造品
金井下新田遺跡展示風景 出土した石製模造品

 榛名山の噴火は、6世紀初頭と6世紀中葉の2度ありました。実は6世紀初頭の噴火による火山灰は遠く埼玉県にも及んでいます。今回の展示で取り上げている特別史跡「埼玉古墳群」でも検出されています。かつて埼玉古墳群の大型古墳で最も古いのは丸墓山古墳ではないかと考える研究者が多くいました。昭和61・62年の丸墓山古墳の整備事業に伴う発掘調査で、丸墓山古墳の墳丘下の旧表土の中にこの榛名山の噴火による火山灰(Hr-FA)が検出されたことにより、丸墓山古墳は榛名山の噴火より後に築かれたことがわかり。5世紀後半に築造されたと考えられる稲荷山古墳より後の築造であることがわかりました。埼玉古墳群のその後の調査でも瓦塚、中の山、奥の山、鉄砲山の各古墳の墳丘下の旧表土中から、榛名山の6世紀初頭の火山灰が検出されています。

 榛名山の噴火が与えた影響はもう一つあります。それは角閃石安山岩です。角閃石安山岩は6世紀中葉の榛名山の噴火によるものです。旧利根川を利用し、さきたま古墳群に供給され、鉄砲山古墳の石室材として使用されています。埼玉古墳群の将軍山古墳の石室材は房総半島の房州石と旧荒川水系の緑泥片岩ですが、鉄砲山古墳は角閃石安山岩と緑泥片岩です。単に石材が変わっただけではなく、他地域との関係、運搬(舟運)の状況などを考える上で大きな手掛かりとなるものです。

 昭和40年代から続けられている埼玉古墳群の整備に伴う発掘調査で、須恵器や土師器、埴輪などから得られてきた調査成果を、今回の展示でご覧いただけるものと思います。今後も整備するための調査が進められるものと思いますが、それに伴い埼玉古墳群の理解がより深まっていくものと信じます。

 

令和4年7月7日(木) 資料調査・活用担当 れもんずき

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(3)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

 【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第3回 江戸から明治へ繋がれた鉄道 -高輪築堤跡の調査から-

 

 今年は、明治5年(1872)に新橋-横浜間に鉄道が開業してから150年の節目です。昨年、日本最初の鉄道の実像を解明する上で非常に重要な遺跡、「高輪築堤」の発掘調査が話題を集めたことをご記憶でしょうか。 

 

 高輪築堤は、現在の田町駅南側から品川駅北側に築かれた、全長約2.7kmの堤防でした。海上に堤を作り、そこを汽車が走るという特徴的な風景は、名所として錦絵などにたびたび描かれました。

 この築堤跡の直上には近年までJR京浜東北線の線路が通っており、その工事によって破壊されていると考えられていました。しかし、品川駅での調査の際に良好に残っていることが判明し、高輪ゲートウェイ駅周辺の開発に先立ち、広い範囲が調査されました。発掘調査によって明らかになった築堤の構造は、下の模式図のとおりです。

高輪築堤跡 海側石垣沿いの杭列

 

 

高輪築堤跡 構造模式図(展覧会図録から転載)

高輪築堤跡 調査風景 高輪築堤跡 構造模式図(展覧会図録から転載)

 

 盛土によって堤を作り、その両側を石垣で補強するのが基本的な構造です。波の影響軽減を意識してか、海側の石垣は傾斜が緩くなっています。この石垣の外側には多くの杭が打ち込まれており、消波ブロックの役割を果たしていました。

高輪築堤跡 海側石垣沿いの杭列

高輪築堤跡 海側石垣沿いの杭列

 

 堤の築造には、西洋の技術を導入しつつも、城の石垣など、江戸時代に既にあった土木技術が応用されています。そのため、石垣の一部には、近隣に所在した品川御台場の部材などが転用されました。品川御台場の発掘調査でも石垣の外側に波除の杭列が発見されており、詳細に見れば違いはありますが、両者の基本的な工法は共通しているように思えます。直接的な繋がりがあるか定かではありませんが、高輪築堤の工事にあたっては、台場築造の経験は大いに参考になったのではないでしょうか。

 

 近代化というと、明治時代になって急激な変化が生じたような印象があるかもしれません。しかし、鉄道の知識は既に幕末に取り入れられており、佐賀藩などで研究が進められていました。鉄道敷設の建白をしたのも旧佐賀藩士であり、幕末からの研究の成果が、ここに実を結んだと言えるでしょう。

 高輪築堤跡は、日本の近代化の歩み、土木技術の歴史を物語る遺跡として、旧新橋停車場跡に追加される形で国の史跡に指定されました。他に例を見ない重要な遺跡であり、今後の調査研究の進展や活用が期待されます。

外観が復元された旧新橋停車場

旧新橋停車場跡出土 汽車土瓶

外観が復元された旧新橋停車場

旧新橋停車場跡出土 汽車土瓶

令和4年6月29日(木) 展示担当 みそポテト

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(2)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

 【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第2回 埼玉古墳群の研究に大きな進展! ~二子山古墳出土の土器群~

 

 現在、当館では全国巡回展の「発掘された日本列島2022」と同時に「埼玉の史跡」展を開催しています。その中から、特別史跡埼玉古墳群二子山古墳の出土土器を紹介します。

 埼玉古墳群内の二子山古墳は、全長132.2mで、旧武蔵国の範囲では最大の前方後円墳です。従来、この古墳は築造年代の決め手となる遺物が少なく、漠然と6世紀前半と考えられていました。

須恵器の坏と蓋

 須恵器の坏と蓋

 県立さきたま史跡の博物館が、平成29年度に墳丘造出しの形態を確認するための調査を行ったところ、たくさんの土器が出土しました。器種としては須恵器の坏と蓋、土師器の高坏がほとんどを占めるのが特徴的です。須恵器の坏は考古学研究における年代観から、6世紀前半でも中ごろに近い時期と推定されました。これは、今まで想定されていた年代よりもやや新しくなります(造出しに土器が置かれた時期が、築造時期に近いとの前提に立っています)。     

 二子山古墳の築造年代が、なぜそれほど重要なのでしょうか。一つには、埼玉古墳群内の古墳の築造順が明らかになることで、時代の流れを理解することができるようになります。当古墳群は5世紀後半に国宝の金錯銘鉄剣が出土したことで有名な稲荷山古墳が造られ、その後約120~30年の間に大型円墳1基と前方後円墳8基が連綿と築かれています。各古墳の分析において欠かせない築造時期が明らかになることで、この古墳群を造ったのはどのような集団だったのかを推測する手がかりとなります。

 もう一つは他の地域の前方後円墳との比較ができるということです。二子山古墳は旧武蔵国地域最大の古墳なので、当時の社会情勢を左右するキーパーソンが葬られている可能性が高いはず。各地域の古墳の比較をすることで、それぞれの地域とのつながりを探ることができ、ひいてはヤマト政権との関係性を推測することができます。

土師器の高坏

 土師器の高坏

 なお、今回展示している土師器の高坏を見ると、奥の3体が白色系、手前の3体が赤色系で、2種類に大きく分けられます。おそらく別々の地域で焼かれた土器と思われますが、どこで作られた土師器なのか今後の研究課題です。色の違いも意味があるのでしょうか。いずれにしても、異なる地域から土師器が持ち込まれていることは注目されます。

 もちろん、今回展示している土器は、古墳の築造時期の解明に有益ということだけではなく、日本の古墳文化全体の考察になくてはならない資料です。今後の調査・研究の進展が期待されます。

 

 

 

 

令和4年6月24日(金) こけっしー

【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」(1)

(巡回展「発掘された日本列島2022」開催期間に、当館学芸員がリレー形式で、今回注目の遺跡や展示品を紹介していきます。)

 

 【連載】ここが面白い!巡回展「発掘された日本列島2022」

 第1回 土器との対話~不思議な装飾に秘められた「縄文人の心」
    (井戸尻遺跡群)

 

 巡回展で、オープニングを飾る縄文土器。よく見ると口の部分に立体的な突起、器面には月や太陽?横にのびる3本指の手?蛇?カエル?はたまた正体不明の生き物?が描かれる。印象的なモチーフはそれだけではない。土器の器面から飛び出したような立体的な造形は水が流れるような模様となり、あるいは4つの箱型の突起となる。なんとも造形が複雑で奔放、個性的な土器たちだ。

 長野県の八ヶ岳西南麓地域には、縄文時代の遺跡が数多く残されていて、「高原の縄文王国」ともいわれるほど、縄文文化が発達した場所として知られている。この地に約3,000年間続いたとされる縄文人の生活文化は、その遺跡名を冠して「井戸尻文化」とも呼ばれ、これらの縄文土器たちを現代に遺した。

 今回展示されている主な土器に注目してみよう。

 

双眼五重深鉢
双眼五重深鉢

 特別展示室に入って最初に目にする1点ものの展示ケースに納まる「双眼五重深鉢(そうがんごじゅうふかばち)」。ドーナツが幾重にも重なるような器形からして、他に例を見ないフォルムで、どっしりとした存在感がある。ドーナツの1段ごとに描かれる文様は、それぞれの段ごとに違い、しかも1段の中でも一見同じに見えて微妙に違う文様が展開する。

 壁側の展示ケースに納まる「蛇文蒸器形深鉢(じゃもんむしきがたふかばち)」。下から口に向かって這い上がるように器面に張り付く紐型の立体表現は、蛇を模したと見られ、土器の口に突出する口先と目、その下に胴体と尾が表現されるように見える。

蛇文蒸器形深鉢
蛇文蒸器形深鉢

 

 そして、土器の肩の部分には、まるで一つの物語りを示すように、同じモチーフを繰り返さない文様が1周する。

 

 

3本指の腕がのびる(蛙文有孔鍔付土器)

謎の生物のモチーフ(生物文深鉢)
3本指の腕がのびる
(蛙文有孔鍔付土器・かえるもんゆうこうつばつきどき)
謎の生物のモチーフ
(生物文深鉢・せいぶつもんふかばち)

 これらの土器に表現された蛇、カエル、生き物などの具象的なモチーフ、非対称表現へのこだわり、図像的な表現には、いったいどんな意味が込められているのだろうか。これらの土器を作った「縄文人の心」を読み解こうと、地元の考古学者たちによる地道な研究が続けられているものの、多くはいまだ謎の領域である。

 ぜひ、「高原の縄文王国」に遺された不思議な縄文土器たちに会いに来てほしい。土器たちと対話をすれば、縄文人の本音のつぶやきが聞こえるかもしれない。

 

令和4年6月21日(火) 企画、学習支援担当 モグリン

「発掘された日本列島2022」ただいま開催準備中!

いよいよ明後日から開催となる巡回展「発掘された日本列島2022」
当館の特別展示室でも、今週の月曜日から展示の準備作業が開始されました。


本日は、その準備風景を少しだけご紹介します。

   

今回の展覧会は全国巡回展のため、巡回展の関係者と当館職員が協力して、着々と展示作業を進めています。

 

巡回展のスタート館である当館では、令和4年6月11日(土)より7月18日(月・祝)までの期間に開催します。

近年発掘され、その成果がまとまった全国各地の注目の14遺跡約14遺跡360点を速報展示するほか、「我がまちが誇る遺跡」と題し、長野県井戸尻遺跡群(縄文時代中期)をはじめとする、各地が誇る個性豊かな遺跡の出土品も公開します。

さらに、当館では巡回展に合わせて、黒浜貝塚、水子貝塚、埼玉古墳群など、埼玉が誇る遺跡の出土品も一同に集めて紹介する注目の展示です。

 

繰り返しとなりますが、「発掘された日本列島2022」の開催は明後日、6月11日(土)より!!

関東のみなさん!当館で見ないと、次は北海道ですよ!
乞うご期待です。

 

令和4年6月9日(木) 企画担当 K・T

blt graph.vol.79

とある、5月の休館日。小雨の降るあいにくのお天気ではありましたが、当館を明るく照らす素敵なお客様が来館されました!
アイドルグループ「日向坂46」の加藤史帆さん、本日発売の『blt graph.vol.79』にて表紙を飾っていらっしゃいます!!
既に雑誌の告知画像を御覧になり、当館での撮影と気付かれた方もいたようです。
今年2月に同じ東京ニュース通信社様のムック本撮影が行われた御縁で、今回も協力をさせていただきました。

 

カメラマンさんの要望により、館内の照明は全てオフ。和風の壁が特徴の季節展示室から撮影がスタートしました。
ここは特別展や企画展等で使用する展示室ですが、会期の合間には縁側のような椅子が置かれ窓の外の竹林を臨む休憩スペースとなっています。
若竹の間から差し込むわずかな光に照らされた加藤さんの横顔が幻想的でした。

※季節展示室は、11日(土)から始まる「発掘された日本列島2022」の会場として使用いたします。現在は展示準備のため閉鎖中です。

 

エントランスホールでは、鮮やかなピンク色のチュールスカートを踊るようにひるがえす加藤さんの姿に視線は釘付け。とても楽しそうに撮影をされている様子が印象に残っています。
その後、木目が転写された打ち放しコンクリート壁の前でSNS用のメッセージ動画撮影も行われていました。

 

 

 

 

 

 

続いて向かったのは、雑誌等の撮影で赤い壁がオシャレと好評をいただいている講堂前ロビーです。
イエローのTシャツに着替えた加藤さんの髪にスタッフの方々が風を送り、爽やかな雰囲気を演出する工夫を拝見することができました。

なお、この講堂前ロビーは通常時には閉鎖しているエリアとなります。
撮影場所を見てみたいという方は特別開放の機会を設けますので、その際にぜひ御来館ください。

 

【講堂前ロビー特別開放】
6月11日(土)、18日(土)、25日(土)13:00~16:00

上記は、講堂にて民俗芸能講習会が開催される日程となります。
前後の時間帯は講習会参加者の入退場により混み合うおそれがありますので、開催時間中のみ一般来館者も講堂前ロビーにお入りいただけます。
講習会自体は事前申込制のため、参加及び見学はできません。

 

埼玉県誕生100周年を記念して開館した当館は、建築家・前川國男氏が設計し日本芸術院賞など数々の受賞歴があるほか公共建築百選にも選定されました。
昨年度には開館50周年を迎え、展示資料とともに埼玉県の歴史を今に伝える建築物となっています。
特徴的な床タイルや講堂前ロビーの赤い壁など、当館の建物に魅力を感じ撮影に起用してくださったスタッフの皆さん本当にありがとうございました。
これを機に、大勢の方が当館に興味をもっていただければ幸いです。

 

令和4年6月8日(水) 施設担当 BP

民俗芸能講習会「江戸里神楽 おかめ・ひょっとこの舞」受講生募集中!

民俗芸能講習会の開催を楽しみにしているみなさま、お待たせいたしました!
「江戸里神楽 おかめ・ひょっとこの舞」を3年ぶりに開催いたします。

岡田民五郎社中を講師に迎え、全4回の講習を通して江戸里神楽のおかめの舞・ひょっとこの舞を学びます。

 

神楽とは神社祭礼などに奉納される芸能のことですが、江戸里神楽はそのほかにも祭り囃子や門付け芸など、多岐にわたり伝承されてきました。

講習会で学ぶおかめ・ひょっとこは、ユーモアな舞として知られています。 

 

ぜひこの機会に伝統的な江戸里神楽を学び、踊ってみませんか?
初心者・経験者問わず、どなたでも大歓迎です。みなさまのご参加をお待ちしております~!

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、予定を変更する場合があります。

※過去の講習会の様子

 

*民俗芸能講習会「江戸里神楽 おかめ・ひょっとこの舞」*

日程:6月4日、11日、18日、25日(すべて土曜日) ※本事業は終了しました。
時間:各回13:00~16:00
定員:24名
費用:1,000円(教材費込・初日支払い)
対象:どなたでも(全4回を通して受講可能な方)
場所:歴史と民俗の博物館 講堂

※最終日は講堂にて公開発表会を予定しております。

※参加にあたっては、マスクの着用及び埼玉県LINEコロナお知らせシステムへの登録にご協力をお願いいたします。

 

≪お申し込み方法≫

往復はがきに、住所・氏名・電話番号を明記し、以下のあて先にお申込みください。

申込締切:5月13日(金)必着 ※申込受付終了

※1通につき1名まで有効です。応募多数の場合は締切後、抽選を行います。

 

〒330-0803
さいたま市大宮区高鼻町4-219
埼玉県立歴史と民俗の博物館 展示担当 民俗芸能講習会係

 

 

令和4年5月3日(火) 展示担当 木彫りのこぐま

BSよしもと『Cheeky's a GoGo!』

さる3月31日、当館からBS放送番組『Cheeky`s a GoGo!』の生中継が行われました。
こちらは、吉本興業に所属するお笑い芸人の皆さんが全国に地域の魅力を伝えるBSよしもとの情報番組です。
今回は東松山市の親善大使を務めるお笑い芸人ボヨンボヨンのお二人が来館されましたので、当日の様子をお届けします!

撮影場所の確認やリハーサルを終え、トレードマークの華やかなドット柄ジャケット姿で登場されたお二人。
まずは、当館の正門を入ってすぐの場所に見える弥生時代の復元住居前のスペースから番組がスタートしました。
館の周辺は「県指定史跡 大宮公園内遺跡」と呼ばれ、弥生時代の住居跡などが発見されています。
こちらでは復元住居にからめたトークを交えながら、当博物館について御紹介いただきました。

 

弥生時代復元住居の後方では、ちょうど大宮公園の桜が満開!
中継の合間には、通りがかった来館者からの写真撮影に応じるなどお二人の気さくな人柄をお見受けすることができました。

その後、埼玉県コーナーとして「渋沢栄一が愛した煮ぼうとう」をテーマに事前に深谷市で収録されたVTRをお届け。
昨年の大河ドラマと再来年から発行される新一万円札の肖像に選ばれたことで、全国的に関心を集めているのが埼玉県の偉人・渋沢栄一です。
当館では昨年度にNHK大河ドラマ特別展「青天を衝け ~渋沢栄一のまなざし~」が盛況を博したほか、現在開催中の企画展「埼玉武術英名録」でも渋沢栄一直筆の書が展示されています。
5月末からは新たに常設展示室にて渋沢栄一にまつわる特集展示を行うなど、渋沢栄一FEVER中です!!

 

関東甲信の他都県からの中継が放送されている間、撮影チームは場所を移動。
エントランスロビーの大窓の外、鮮やかなピンク色のミヤビザクラが咲く通称サンクガーデンから中継が再開されました。
ここでは、埼玉県が製作した観光PR動画の秩父編を紹介。

【ちょこたび埼玉YouTubeチャンネルの該当動画 https://youtu.be/nxG3XK5kG6A】

シバザクラの名所である羊山公園など、これからの季節にピッタリなお出かけ情報を発信してくださいました。
当館では手ごろでおしゃれな絹の着物「銘仙」の企画展を10月から予定しており、国の伝統的工芸品に指定されている秩父銘仙についても展示いたします。
中継の最後には、この企画展「銘仙」の宣伝も交えていただきながら撮影は終了しました。

 

改めましてボヨンボヨンのお二人、県の観光情報や当館の広報に御協力いただき誠にありがとうございました!!

なお、今回は中庭の舞台やサンクガーデンなど一般のお客様の立ち入りを制限しているエリアで撮影を行いました。
来館者の皆様の御観覧の妨げにならないようにと配慮したうえでの、特別な対応となっております。
くれぐれも掲示物等の注意事項に従い、ルールに沿った御利用をお願いいたします。

 

令和4年4月27日(水) 施設担当 BP