このページは、埼玉県立歴史と民俗の博物館のスタッフが、博物館のイベントや大宮公園の様子、日々の業務から感じたことなどを皆様にお伝えしていくページです。各スタッフが自分の言葉で語りますので、ややつたない表現になることもあるかもしれませんが、大目に見ていただければ幸いです。

当館建築の魅力 ~素材を活かすディテール~

当館は今年で開館から50年が経とうとしています。
建物の設計は建築家の前川國男氏が手がけました。前川氏は日本の近代建築発展に大きく貢献した人物です。当館はその傑作の一つとも言われます。

今年の1月、このスタッフブログ上に「当館建築の魅力(予告編)」を掲載しました。
当館竣工時のパンフレットに寄せられた前川氏のコメントから、前川氏の建築作品を読み解く7つのキーワードを紹介していきます。

今回は、7つのキーワードのその1「素材を活かすディテール」です。随所に見られる素材やディテールに注目して当館を御紹介します。

 

まず印象的なのは、外観の重厚なレンガ…のように見えますが、実はタイルです。

これは「打ち込みタイル」と呼ばれており、窯元で一枚一枚職人の手で焼かれたものです。前川氏の後期作品に多く使われています。

正面から見た「打ち込みタイル」

 

断面の形状

 

重さはなんと、一枚約3.7kgもあります。重くて壁から剥が落ちてしまわないの?と思いませんか。

この打ち込みタイル、複雑な断面の形状や貼り方に剥がれないための秘密があるのです・・・これはとてもこのブログ上では語りきれないので、また別の機会に御紹介させてください。

タイルは外壁だけではありません。館内床には張り巡らされた2色のタイルが網代(あじろ)張りされたものや、

床と壁のすき間を保護する巾木(はばき)もタイル製です。通常の住宅や建物であればビニル製や木製が一般的です。
また、階段回りのタイルも、複雑にカーブしています。

タイルを焼き上げるときに行う手作業での曲げ加工、現場で貼るタイルの数を考えると・・・こりゃ職人泣かせでしょう。

 

 

次に、エントランスやカフェのテラスで見られる構造用の柱です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当館の常設展示室からエントランスを抜けてカフェまで広がる大空間を支えています。
十字形に溶接した鉄骨とコンクリートを合成し、上端は十字形、下端は八角形という複雑な形状をしています。

また、画像では見えづらいですが、表面には木目がうっすらと見えます。

この木目模様は、館内のコンクリート壁にも見られ、

コンクリートを打ち固めるときに周りを覆う、型枠の木目を転写させてできたものです。転写するには、コンクリート打設時の高度な技術が必要です。

型枠は、外すとコンクリートが付着し使いまわすことができないため、柱ごとに一つ一つ型枠が必要になるために手が込んでいます。施工者のプライドすら感じさせます。

 

他にも、前川氏が設計したこだわりを見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

館内の吹抜けや階段の鉄製の手すりは、鳥のような形状から「トンビ」と呼ばれ、前川氏の手がけた建築で多く見られます。

 

エントランスに設置された前川氏特注の吊り下げ照明は、赤みがかった銅色で、前川氏本人も「竹筒をつなげたような形」と評しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イスも前川氏によって特注されています。座り心地はソファのようで、立ち上がるのが億劫になります。

ちなみに、スピッツの楽曲「正夢」プロモーションビデオでメンバーが座ったイスです。(当館HP「博物館紹介」の「施設紹介」ページから映像を御覧いただくことができます。)
※現在は感染症対策のためエントランスには設置していません。

 

最後に、鎖と金物で繋がった間仕切りです。講堂ロビーと廊下を緩やかに区画しています。近づいて見ると、金物の一枚一枚金づちで叩き鍛造された跡が見事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来館された際には、あらためて当館建物のディテールにも着目下さい。

 

令和3年6月23日(水) 施設担当 みそだれぼたん

館内の防虫作業完了!

当館では、先日6月7日(月)から14日(月)まで臨時休館をいただいておりました。

例年この期間には、資料保存を目的とした館内の防虫作業等を実施しています。
今日は、その作業の様子や休館中の館内の様子を御紹介いたします。

 

まずは防虫効果の高い薬剤を噴霧するにあたり、展示資料をケースから取り出す作業を行いました。

常設展示室の第1室には土器など多くの考古資料が並んでいますが、元あった場所がわからなくなることのないよう展示具に資料のメモがかかっています。

 

撤去作業が終了し、いよいよ薬剤噴霧です。

 

専門の業者が薬剤を噴霧した後、室内に薬が行き渡るように展示室は封鎖されました。

この状態で24時間程度経過させると、展示室内には虫が寄り付きにくくなります。
人体に影響の出るものではないので、ケースに触れてしまった場合でも害はありません。
(とはいえ、保護者の方はお子様の手が触れることのないよう御注意をお願いいたします。)

 

また、展示資料を撤去した機会を活用しケース内の清掃や照明器具の交換も行っています。

 

 

このように博物館にとって必要不可欠な休館期間を経て、現在は万全の態勢で再開しております。
ぜひ、御来館の際には虫の寄り付かないピカピカの展示ケースにも注目してみてください。

 

令和3年6月17日(木)  施設担当 BP

NHK大河ドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」見どころ解説【後編】

NHK大河ドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」は5月16日(日)まで開催予定です。いよいよ、会期も残すところわずかとなりました。
ご来館の皆様には、当館の新型コロナウイルス感染拡大防止対策にご協力いただき、誠にありがとうございます。

さて、スタッフブログでの見どころ解説【後編】です。

 

◆第4章 社会 社会事業に生きる

栄一は、古希を前にした明治42年(1909)に、多くの企業や団体の役員を辞任します。早くから取り組んでいた社会事業に本格的に関与し、福祉・教育・文化など、様々な事業で大きく貢献しました。栄一が目を向けた社会・文化活動をご紹介します。

・養育院:病人や孤児、生活困窮者の保護や支援を行う施設。設立の契機が松平定信の七分積金制度であったことから、栄一は定信に感銘を受け、定信の顕彰活動を行いました。

・埼玉学生誘掖会:埼玉出身の学生のために寄宿舎設立や奨学金貸与などを行いました。

・日本女子大学校:女性のための高等教育機関・日本女子大学校の創設に際して、資金援助などを行いました。昭和6年(1931)には、栄一は3代校長に就任しました。

・温故学会:埼玉の偉人・塙保己一の業績を顕彰するため、栄一らが中心となって設立しました。

・埼玉会館:関東大震災を受けて資金難にあった埼玉会館の設立にあたって、多額の寄付を行いました。その功績により、栄一の揮毫の銘板が埼玉会館入口に掲げられました。

旧埼玉会館銘板(当館)

 

※養育院の補足:渋沢栄一旧蔵の松平定信に関する資料については、こちらのページから「渋沢栄一」と入れて検索してみてください。

また、特別展では、栄一が持っていた絵画や、栄一が制作を依頼した美術作品などを展示しています。普段は公開されることが少ない作品ばかりです。ご注目ください!

 

◆第5章 平和 民間外交

昭和2年(1927)、アメリカでの排日移民法による日米の関係悪化を危惧したシドニー・ギューリックに協力して、栄一は日米人形交流事業を計画します。アメリカから約12,000体の友情人形(いわゆる青い目の人形)が日本に贈られ、その御礼として、日本は58体の答礼人形をアメリカに贈りました。埼玉県内に残る青い目の人形12体と、復元された埼玉県代表の答礼人形・秩父嶺玉子(ちちぶね たまこ)をぜひ展示室で御覧ください。

埼玉県内に残る青い目の人形12体

 

秩父嶺玉子(復元)

 

 

◆エピローグ 遺産 論語と算盤

経済界では、企業倫理が問われる時代となり、『論語と算盤』が読み直され、再び栄一の活動が脚光を浴びています。また、栄一は亡くなる直前まで、ラジオによる平和講演を続けました。栄一が訴えた平和への思いは、現代を生きる私たちに託されているのではないでしょうか。この特別展を通じて、皆さんに渋沢栄一のまなざしを感じていただけたらと思います。

 

前編・後編にわたって、見どころ解説にお付き合いいただき、ありがとうございました。

当館でのNHK大河ドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」をご覧いただけたら、大河ドラマ「青天を衝け」をもっと楽しめるはずです!ぜひこの機会をお見逃しなく!

展覧会の内容について、もっと詳しく知りたい!という方は展覧会図録を是非お手に取ってみてください。通信販売も実施中です。

 

 

 

 

 

 

 

令和3年5月12日(水) 展示担当 わだつみ

NHK大河ドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」見どころ解説【前編】

NHK大河ドラマ特別展「青天を衝け~渋沢栄一のまなざし~」は5月16日(日)まで開催予定です。いよいよ、会期も残すところわずかとなりました。
新型コロナウイルス感染防止のため、5月1日(土)の見どころ解説は中止となってしまいました。そこで、スタッフブログで見どころ解説を行います!今回は【前編】です。

この特別展では、渋沢栄一について、近代日本経済の基礎づくりを果たした実業家としてのみならず、福祉・教育・文化・外交といった社会事業家としての姿に注目しています。「公益」つまり「みんなが豊かになること」を大切にした栄一の足跡を辿ってみましょう。

 

◆プロローグ 原点 血洗島

栄一が生まれ育った深谷の血洗島村。この地は稲作に適さなかったことから、年貢が米ではなく、金納であったため、早くから貨幣経済が展開しました。また、中山道によって、江戸からの物資や情報が流通していた地域でもありました。藍玉を商う農家に生まれた栄一は、父・市郎右衛門や十歳年上の従兄弟・尾高惇忠の教育を受けながら、この地で少年時代を過ごしました。

 

尾高惇忠書「威震寰宇(いしんかんう)」(当館)

 

栄一は藍の行商先であった信州(現在の長野県)を度々訪れ、18歳の時に内山峡(現在の長野県佐久市)で『内山峡詩』を詠みました。『内山峡詩』に書かれた言葉が、大河ドラマのタイトルである「青天を衝け」です!この詩は昭和15年(1940)に地元有志によって磨崖碑がつくられました。この特別展ではその拓本を原寸大印刷して展示しています。

 

内山峡詩磨崖碑

 

◆第1章 転機 一橋家臣から幕臣へ

栄一らは攘夷決起を計画しましたが、京都の情勢を受けて冷静に判断し、未遂に終わります。その後、一橋家家臣・平岡円四郎の引き立てにより、栄一は一橋慶喜(徳川慶喜)に仕え、家臣となりました。一橋家の領地であった井原(現在の岡山県井原市)に派遣され、農兵の募集や財政基盤づくりで功績を挙げます。さらに、パリ万博に赴く昭武(慶喜の弟)に随行し、ヨーロッパで多くの経験を得たことは、栄一の人生を決定付ける転機となりました。
しかし、渡欧中、見立て養子とした平九郎が飯能戦争で自刃するなど、悲劇にも見舞われました。

(伝)渋沢栄一所用陣笠(当館)

 

◆第2章 改革 明治政府官僚

栄一は明治2~5年(1869~72)の短い間に、明治政府の官僚として、貨幣制度、税制改革、銀行制度、郵便制度、鉄道敷設など様々な制度を導入しました。明治4年には、ヨーロッパでの知見をもとに、会社と銀行についての概説書を著しています。官僚でありながら、栄一は現代の会社組織の基礎についても既に考えを持っていたのです。

 

『官版立会略則』(当館)

 

◆第3章 経済 資本主義の礎

官僚を辞した後、栄一は民間の実業家として数多くの企業を設立しました。なんと、栄一が関わった企業は500社を超えると言われます!近代日本経済の発展の立役者なのです。
全てをご紹介することは難しいので、この特別展では厳選してご紹介しています。

・第一国立銀行:日本で最初の銀行です。栄一が総監役・頭取に就任しました

・抄紙会社(王子製紙):印刷業の発展には、洋紙の国産化が不可欠と考えました

・清水組(清水建設):栄一の住居や関係する企業の建築は、清水組が数多く手がけました

・澁澤倉庫:現在も唯一「渋沢」の名を冠する企業

・日本煉瓦製造株式会社:東京駅や官庁の建材となった煉瓦製造を担いました

※清水建設株式会社の資料についてはこちらをご参照ください

※澁澤倉庫の成り立ちなどについてはこちらをご参照ください

 

お腹いっぱいの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の展示はもっと盛り沢山です!
第4章以降は【後編】に続きます!

 

(令和3年5月7日 展示担当 わだつみ)

民俗芸能講習会「秩父屋台囃子」の募集を開始しました!

昨年度に開催できなかった民俗芸能講習会「秩父屋台囃子」を6月から開催いたします。
みなさまのご参加をお待ちしております。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、予定を変更する場合があります。

※平成30年の練習風景です

 

秩父屋台囃子は、秩父地方各地で長く親しまれてきた祭り囃子です。この講習会では、秩父夜祭等で力強い音を響かせてきた秩父屋台囃子保存会から講師を迎え、4日間の講習を通して太鼓の演奏技術を学びます。

 

✱民俗芸能講習会「秩父屋台囃子」✱

 日程:6月20日、27日、7月4日、11日(すべて日曜日)

 時間:各回13:00~16:00

 定員:太鼓コース 15名 ※笛コースの募集はありません。

 対象:どなたでも(全4回を通して受講可能な方)

 場所:歴史と民俗の博物館(講堂)

 ※最終日は講堂にて公開発表会を予定しております。

 ※参加にあたっては、マスクの着用及び埼玉県LINEコロナお知らせシステムへの登録にご協力をお願いいたします。

 

≪お申し込み方法≫

 往復はがきに、住所・氏名・電話番号を明記し、以下の宛先にお申込みください。

 締切:6月4日(金)必着 ※1通につき1名まで有効です

 〒330-0803
 さいたま市大宮区高鼻町4-219
 埼玉県立歴史と民俗の博物館 展示担当 民俗芸能講習会係

 初めての方も、リピーターの方も、ご応募お待ちしております!!

 

 (2021年5月3日 展示担当 たままゆ)