企画展「古文書 大公開!」レポート

常設展示「円空仏」に引き続き、いよいよ8月7日(火)から後期展示が始まった企画展「古文書 大公開!」の魅力もご紹介します!

今回の企画展は、副題にもありますが「みる・よむ・しらべる埼玉」です。古文書を「よむ」とは言っても読めない文字があるばかりで、よく分からない…という方もいらっしゃるかと思いますが、読めなくても楽しめます!

というのも、本展では、埼玉県立文書館のキャラクター・もんじろうが当館に出向いて、鑑賞のサポートをしてくれます。以下のように、どんな内容の文書なのかを一言で伝えてくれます。




他の文書についてももんじろうが解説をしてくれるので、何をしたためた文書なのか、どうしてその文書が必要だったのかを知ることができ、当時の人々のやりとりを垣間見ることができます。

また、読めなくても楽しめるおすすめは筆跡くらべや花押(かおう)くらべ、紙くらべです。

筆跡については、たとえば今回展示中の文書では「武蔵国」の字が多く使われているので、それぞれの筆使いを比べることができます。この「武蔵」はかっこいい!これは知的!あれはかわいい!などなど、手書きだからこその楽しみ方です。

一方、花押(かおう)についても、もんじろうが易しく解説をしてくれます。花押は今でいうサインのようなもので、それぞれに個性があります。伊達政宗を例にとると、次のようなイメージです。


 

この花押は、セキレイの長い尾を模したといわれるかわいらしい花押です。一方、オケラに似ているのでケラ判…という千利休のインパクト大の花押、頼朝「束」と「月」の字を組み合わせた花押など、趣向を凝らした花押が満載!お気に入りの花押を探してみるのも楽しみ方の一つです。

また、8月4日(土)開催の歴史民俗講座「紙から知る、古文書」でも紹介された、紙の種類に注目するのも古文書を楽しむ要素の一つです。企画展の導入エリアとなっている季節展示室では、紙を実際に触ることもできます。



やわらかい手触りの竹紙(中国由来の紙で、お経などに用いられていたそうです。)と丈夫な細川紙、それぞれ2種に触れることができます。(細川紙(薄手)の薄さがなんとも好きです…!)県内産の和紙細川紙はユネスコ世界遺産にも登録されています。

展示中の古文書たちも、使用されている紙は様々です。後醍醐天皇の綸旨(No.63、天皇からの意志を伝える文書)には紙を漉き返した、いわばリサイクル紙のような灰色みを帯びた宿紙(しゅくし)が使用されています。

天皇なのにリサイクル紙を使うなんて…?と思いきや、あくまでも天皇のお言葉を聞き書きするもので天皇自筆ではないから、とも言われますが、一方で漉き返された紙はお経だったとの説もあります。お経がしたためられていたありがたい和紙を再利用することで、綸旨もより格調高くなるといったところでしょうか。

どの古文書にどんな紙が用いられているかにも注目してご覧になってみて下さい。

以上、古文書の楽しみ方(私個人の楽しみ方に偏ってしまうところもありますが)をご紹介しました。8月7日(火)からは後期展示も始まりました!皆さまもぜひご自身の楽しみ方で古文書たちと向き合って頂けたら幸いです。

(平成30年8月15日 企画担当 雨女)

常設展示「円空仏」レポート

久しぶりの更新となります。企画担当 雨女です。

異例の暑さが続いておりますが、博物館は元気に開館中です!

夏休みは博物館へ、ということで、今回は開催期間も残すところ3週間となった常設展示「円空仏」のレポートをお届けします。

円空仏は江戸時代前期の僧侶、円空が作った仏像です。円空仏を初めてご覧になる方は、仏像と聞いて皆様が思い浮かべるイメージとの差に驚かれるかもしれません。(失礼ながら、私は初めて拝見したときにそう感じてしまいました)

百聞は一見にしかず、まずは一体ご覧いただきますとこのような仏像です。


矜羯羅童子立像(こんがらどうじりゅうぞう)

彫りに対して円空仏は「素朴」ともよく表現される作風ではありますが、彫られたその優しい顔つきに親しみを覚えます。
(歩いていたらふと出会って、話しかけてくれているような気さくな親近感です…!)

前から見ると分かりませんが、その背面が割り放たれているのも円空仏の特徴です。


なぜ背面がこのようになっているかは、江戸時代の書物『近世畸人伝』から窺えます。



『近世畸人伝』(伴蒿蹊著、三熊思考画)

この文献には、「もてるものは鉈(なた)一丁のみ。常にこれをもて仏像を刻む所作とす」書かれ、併せて仏さまのお顔を木に直接彫りつけている様子が描かれています。

実際どのように制作していたかはわかりませんが、木を切りだしてから彫るのではなく、彫ってから切りだしているので、背面には刻まれないのかもしれません。

そんな円空仏ですが、関東では埼玉県で最も多く確認されていて、今回の展示でもたくさんの仏さまにお会いすることができます。

そのうちのおすすめをご紹介します!(個人的好みの偏りがありますが…)。

円空仏は、一つ目の写真でご紹介したように、優しいお顔をしている仏像が多くありますが、今回展示されている資料の中でも私のお気に入りは、「十一面観音菩薩立像」の頭上面部分です。


ずらりと並んだかわいらしいお顔がほほえみかけてくれているようで、癒されます。似たようなお顔は、同じ部屋で展示されている十二神将の中央、薬師如来さまにも見ることができます。こちらはぜひご来館の上、ご覧ください。この十二神将像の一群は、それぞれに十二支を冠していて、よく見るとその動物らしさが感じられるところも見どころです!

今回の展示「円空仏」で最初にお迎えしてくれるのは、「秋葉大権現及び両脇侍立像」です。


天狗のようなお顔をしているのが注目されますが、実はその足元にもよく注意してご覧いただくと…

 


白狐のようなお顔もあります!狐を従える烏天狗、を表現しているようです。

このように、円空仏は一見あっさり彫られているように見えて(という私の先入観がありました)、見どころがたくさんな「円空仏」は9月2日(日)までの展示です!

最後に、円空仏ファンの方、今回の展示で円空仏を好きになった!という方には、円空仏デザインの年間観覧券もおすすめです。こちらも9月2日(日)までの限定販売ですので、この機会にぜひご検討ください!




(平成30年8月13日 企画担当 雨女)

燻される弥生時代復元住居

暑さが日ごとに加わってまいりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今日は、当館の中庭にございます弥生時代の復元住居の燻蒸(くんじょう)について、ご報告したいと思います。

~ 燻蒸中 ~
 

弥生時代復元住居は、毎年2回(5月5日、11月14日)開放し、みなさまに実際に中に入って見学していただくなど、当館の展示品の一つです。
そしてこの復元住居を末永く保存し、活用していくため、年に数回燻蒸(くんじょう)作業を行っております。
燻蒸を行うことにより、防菌・防虫効果をもたせ、茅葺の住居を適切に保存することができます。



直径数十センチの管を、住居の入り口から住居内に入れます。



トラックに積まれた装置↑により、煙が発生します。
この装置から発生した煙が、管を通って住居内に入っていきます。



だんだん煙が住居内に充満してきました。



モクモクと煙が出てきます。いぶりがっこのような匂いがします。

住居のなかはどうなっているのでしょうか?

        
ご覧のように、すっかり煙で充満し、中が見えないほどです。

このように、数時間かけて住居を燻蒸し、すっかりきれいになりました~


じつは、現在、茅葺などによって住居をつくることは、建築基準法により原則禁止されております。
つまり、一からこのような復元住居をつくることがとても難しいのです。
そのため、今ある復元住居をこれからもずっと皆様に見ていただけるよう、専門家の方の力も借りながらきちんと管理してまいります。

そんな感じで、手間暇かけて大切に展示している弥生時代復元住居の次の公開は
11月14日(水)です。
みなさまのお越しをお待ちしております。

(平成30年7月24日 展示担当 黒曜せき子)

企画展「田んぼ」レポート

皆様はじめまして!
4月から企画担当となりました雨女です。

新社会人で初めてだらけの日々ですが、本日は初めてのブログ更新です!

初記事では、現在好評開催中の企画展「田んぼ」の展示資料の中から、
おすすめの資料を一つ紹介したいと思います。

企画展「田んぼ」では昔の米づくりに使われていた道具や、農作業の時に着ていた衣服、
豊作を祈って行われる行事について紹介しています。
おすすめは「第四章 田んぼと暮らす」に展示されている、行事に用いられるあるものです。

展示室の後半、大きな「タイマツ」に目を奪われながら部屋を曲がると、何やら藁の山が…?


(見上げるほどの大きなタイマツ)

と思いきや、まわり込んでよく見てみると、大蛇です!

正面に立つと、その大きな口に飲み込まれそうです。



ひげもあって、威厳があります。この威厳なら、悪いものはたちまち退散しそうですね。

これは川口市指定無形民俗文化財「安行原の蛇造り」で作られる大蛇です。
五穀豊穣、無病息災を祈願する行事ですが、この大蛇、なんと大きさは10mにもなるそう。
大蛇は稲藁で作られていて、目の部分には籾殻が入っています。

この行事は毎年5月24日に川口市安行原で開催されているそうなので、
もうすぐ実際の行事も見ることができますね!


ちなみに、この直前にあるタイマツは越谷市の北川崎で毎年7月24日に
行われている埼玉県指定無形民俗文化財「北川崎の虫追い」に使用されるものです。
タイマツに火を灯し、害虫を追い払って豊作を祈るとのことです。
こちらもその大きさはインパクト大です。併せてご覧になってみてくださいね。


企画展「田んぼ」では、今回ご紹介した資料以外にも、
国指定重要有形民俗文化財「北武蔵の農具」をはじめ多くの資料が紹介されています。
講座や展示解説などのイベントもありますので、ぜひお立ち寄りください。

企画展「田んぼ」
~5月6日(日)まで *月曜休館(4月30日は開館)

○関連イベント

 ❖歴史民俗講座「農具百珍」
 農具にあふれる工夫とおもしろさの視点から、埼玉の稲作についてご紹介します。
  講師:戸邉優美(当館学芸員)
  日時:4月28日(土)14:00~15:30(開場13:30)
  会場:当館 講堂
  定員:150名
  費用:無料
  申込:☆★☆電話受付中!!(先着順)☆★☆

 ❖子ども向け展示解説(臨時解説)
  学芸員といっしょに、ワークシートに挑戦しよう!
  日時:5月5日(土)13:00~13:30
  事前申し込み不用、要観覧料

 ❖展示解説
  日時:5月6日(日) 13:30~14:00
  事前申し込み不要、要観覧料


(平成30年4月25日 企画担当 雨女)